仕事帰り、西荻で中崎さんと落ち合い、オススメの店を紹介してもらうことに。昼間三鷹の井心亭でお茶会をして、その後飲んできたところだという中崎さんは、既に顔にほんのり赤みが差していた。まずは『戎』の前にある台湾料理『珍味亭』へ。カウンターの上の銀色のボウルに無造作に詰まれた豚足,豚耳,ピータンといった珍味の数々が泣ける。豚足と豚耳をチョイスしてビール。もの凄い量で泣ける。煙草の吸殻もカウンター下の床にポイ捨て状態の完全に台湾屋台スタイルで泣ける。コラーゲンでお肌ツヤツヤになって店を後に。中崎さんは飼っている犬のためにビニール袋を貰って豚足の残った骨を持ち帰っていた。「たまにはこういうのを与えて可愛がってることをアピールしないとさあ、僕が飼い主だってことをなかなか分かってもらえないんだよね」。。次に訪れたのは、創業20ウン年というヒッピー居酒屋『のみ亭』。中崎さんのお茶会のメンバーが偶然なのか必然なのか続々と流れてきて何やら強力な磁場を感じる。中崎さんはデートだとか言ってお茶会の飲みを後にしてきたらしいのだけど、相手が僕だと分かってやたら冷やかされたりしている。古酒泡盛「菊之露」をロックで頼んだら滅茶苦茶美味くて痛く感動。中国茶の話、多摩川金管三重奏団(略して「多摩金」)の話、マヘルの話、工藤さんの話、ザッパの話、クラシックの話、人には言えない恥ずかしい音楽遍歴と家で人に音楽を聴かせるときの穴があったら入りたい気持ちの話、メロディーで聴く世代とリズムで聴く世代の話、昔の話、中崎さんの思考ベクトルの話、歴史性の欠如の話、など、ディープ過ぎる一大パノラマ絵巻が繰り広げられながら悠久の夜は更けていった。「本当に好きなことしかやってこなかったんだと思うよ。僕の人生を振り返ってみるとさ、あたり一面砂漠なんだけど、僕の歩いてきた道のりだけ金の芝生が生えてるのが見えるんだよね」