朝っぱらから澁谷さんと昨晩は眠くて語り尽くせなかった「ブギーナイツ」の普遍性と汎用性について討論しているうちに、話は映画「マヘル・シャラル・ハシュ・バズ」の製作妄想へと発展。共同体の内部と外部、内部における寸劇的滑稽さなどについてひとしきり大いに盛り上がった後、澁谷さんは悦子さんに逢いに高円寺へ出かけていった。ざっと部屋の掃除をして、大内君から貰った茄子とししとうとピーマンと鶏肉で揚げびたしを作って冷やしておく。久しぶりに孤独になれた気がして、読みかけの古井由吉の小説の続きを読んだり、ピアノを弾いたり曲を作ったりする。夕方工藤さんから連絡があり、大久保で飲んでいるから来いとのこと。今日は清成さんがうちに来ることになっていたので清成さん澁谷さんにあたふたと連絡をとって大久保駅で落ち合うこととなる。集合後、3人で新大久保までてくてく歩いて行って面白い中古楽器屋で澁谷さんは格安のYAMAHAのアナログシンセを購入。引き返して屋台村で飲んでいた工藤さん・西川さん・大谷君・長谷川さんと合流。工藤さんは、あんまりひどいことが重なるとひとつのことくらいではもう落ち込まなくなって鮎川信夫の「地上にはぼくを滅ぼすものがなくなった」という意味がやっとわかって自分が人生のまんなかにいるような気がしてきてもうどこの飲み屋でも変わんないやというモードになっていた。僕も勢い辛い事を告白したくなってきて工藤さんに話したり、勢い余ってハグしたりする(モリッシーか)。澁谷さんの「僕はマヘルのダグ・ユール」発言。清成さんの工藤さんへのマニアックインタビュアーモード・スイッチ・オン。清成さんと工藤さんと僕で下戸の他の人達を尻目に延々とビールを飲み続けてお開き。澁谷さんと一緒に帰宅すると、植野さんが来る。夏野菜の揚げびたし好評。ニカハウスに行かないかと誘われるが、僕は明日から社会復帰しなくてはいけないのでいつまでも夏休みモードではいられない。ビル・ウェルズやマヘルについてうだうだ喋っているうちに、またまた植野さんがダイニングでレーニンの死体状態になり、間もなく僕達も就寝。うつせみや献眼のこと語りをり(岸美江)