犬の多い月の綺麗な夜道を歩いていると、月色に輝く駝鳥のような巨大な飛べない鳥が道の真ん中に立っている。怖いので避けて通ろうとすると追いかけてくる。こちらが走れば向こうも走る。顔はアヒルのそれで首を地面と水平に伸ばしてパクパクやりながら追いかけてくるので、「あッ、噛まれる」と思う瞬間が何度もあり冷や汗をかくが、僕の背中から10センチくらいのところをキープしているので決して噛まれないのだった。やがて道に山羊が現われると、そっちの尻を追いかけてふらふら行ってしまったのでホッとして逃げる。

今日はウィスットポンニミットinメディアテークの日。植野さんさやさんは出演者である。朝起きると集合時間30分前くらいだった。植野さんの携帯に仕切りのとりばみさんから10回くらい不在着信が来ていて笑う。さやさんがいつまでたっても起きないので、「何でこんなマネージャーみたいなことやらなきゃいけないんだ」とブチ切れながら蹴り起こす。こんな差し迫った状況でも朝食のフレンチトーストは欠かせない。とりばみさんの電話攻撃に急き立てられるように出発。プリンスの「Dirty Mind」好評。澁谷家に寄って澁谷さんをピックしてメディアテークへ。ウィスットは既にアニメにあわせてソロのピアノの練習をしていた。そして本番。ウィスットのアニメは観点のコロンブスの卵的転換とウィットと人生と愛と泣き。かなり楽しめた。不覚にも泣きそうになった作品もいくつか。いやあ、良かった。植野さんさやさん澁谷さんが加わった演奏では、澁谷さんがプリンスの「Do it alright」のリフをアナログシンセで弾くやつが何故か微妙に和風な感じで良かった。ウィスットの漫画を買っていると山路さん・朝倉さん・大野さんに会う。出演者は打ち上げでお茶するというので、ナツさんに誘われるままに写真展のはしごをする。まずはeditで城田清弘さんの写真展。「境界を踏む」という題名だけあって様々な境界線が焼き付けられている。巨木によって絶対に開かないようになっている家のドアなど。続いて、ART SPACE SORAで小岩勉さんによる「STAND#04」に行くと山路さんが来ていた。藪の写真の前でナツさんが人の案内をする糸とんぼの話を力説する。何故かお菓子とかコーヒーとかをいただいてすっかり寛いでしまい、小岩さんも交えて高級家具の話など。やがて朝倉さん・大野さんも来る。お名残惜しいけど握手をしてお別れ。ナツさんとメディアテークに戻り、植野さんさやさん澁谷さんと合流。澁谷家に楽器を運び、念願のナツさん作成の利府の猫屋敷の壁画へ。道のりは遠く着くとすっかり夜になってしまったが、壁画はライトアップされており堪能する。大満足。猫達と遊びまくりエジプト産スフィンクスという変種にビビり、マタタビに狂う山猫を尻目にサーカス団長に挨拶して一路実家へ。さやさんは完全に使い物にならなくなっており車に残して、植野さん澁谷さんナツさんと晩飯。天麩羅奉行の父親がその場で揚げる天麩羅、茸の甘辛煮、サラダ。美味い美味い。植野さんエチオピア40倍カレーの女の話を披露。植野さんさやさん澁谷さんナツさんはニカカーに乗り込みここでお別れ。僕は今日中に帰らなくてはいけない。疲労していてなかなかふんぎりがつかず。シャワーを浴びて何とか出発。23:00にとりあえず仙台を発ち菅生PAでずんだもちを買い途中福島の安積SCで限界に達し爆睡して起きたら4:30で慌てて車を走らせて7:00三鷹に着いてそのまま仕事に行く。

8:00実家着。ビールとシリアルの朝食。父親に僕が生まれた当時に父親が描いたという絵とか僕が生まれた当時に書いたという落書きとかを見せてもらう。植野さんにメールすると、吾妻でロングブレイクしているという。雨がしとしとと降り出し、しばし仮眠。10:00頃、さやさんからの℡で叩き起こされる。仙台南ICに着いたというので迎えに行く。3人で実家に着くなりコード譜を机の上に広げてバタバタと作業を始める。母親が振る舞ってくれたスパゲティーミートソース、舞茸ごはん、ミズのおひたしに舌鼓を打っていると、陽光が復活してきた。植野さんと渡辺商店まで煙草を買いに散歩。最近のテニスの状況、植野さんの実家の話など聞く。妹のピアノ練習をBGMに作業を進めながらコーヒー飲みまくり。さやさんに「音楽とトリとコーヒーハウス」と言われる。小型キーボード2台とガットギターによる「君になりたい」セッション盛り上がり、とりあえず本日演る曲がまとまる。植野さんがシャワーを浴びて撃沈(レーニン)してしまい起きないので、さやさんと2人でピアノ2台で盛り上がって今日が本番だということも忘れて遊んでいるうちに出発の時間となってしまう。果たして本番は大丈夫なのか。デミ夫一台で市内へ。国分寺に寄って植野さん巻きタバコDRUMを買う。火星に着くと、田口さんらtreo一行も丁度到着したところで、何やら大いに盛り上がっている。牛タンを食いたいと言うので牛タン味太助付近までの道を教える。連絡の行き違いでどうやら一時間早く到着してしまったらしいので、火星の横で練習。久美子さんにアイスティーを頂く。やがてyumbo一行が到着し、treo一行も戻ってきて会場作りの時間となる。今回は会場を縦に使うという斬新な発想。テニスのリハ。探り探りで殆ど何もつかめず。1バンド目、yumbo。心に余裕がなく落ち着いて観られなかったが、相変わらずの木目細やかな木材のような音。そして澁谷さんが子供の時抱いて寝ていたというYAMAHAのアナログシンセが火星に響き渡る。2バンド目、treo。僕と植野さんは外のウィンドウから観る。ザ・バンドマン達の饗宴。植野さんに「告白してもいいですか?...今すっげー緊張してるんです。こんなことするために生まれてきたんじゃないのに...」。それはこっちも一緒っす。そしてテニスの本番。「ブーツ」での死ぬほど楽しそうな植野さんのギター。工藤さんのノイズ時代のオルガンはサステインがかかりっぱなしになって茫漠とした音しか出ず。コンピュータのように構成を間違わないことが一応課題だったが、結局ラストの「君になりたい」では暴走しまくって全くさやさんと合わずにノリだけで押し通す。山路さんが劇的なドラムで参加。でも終わったらオールオッケー皆ハッピーな雰囲気だったので、とりあえずまあいいかと思うことにする。戸田君からポーツマスシンフォニアのMDを貰う。「ロックンロールでしたね」と言われる。そうか。。打ち上げ。栗御飯などまたしても豪勢なご馳走。山路さん・朝倉さん・大野さんなどがいる地帯に潜入し、飲みまくり話しまくり大変楽しいひと時を過ごして散会。2:00くらいだったか。運転は植野さんに任せて澁谷家へ。今日のビデオなど観る。やがてtreo一行が到着し、植野さんさやさん僕は実家に戻る。ふーっという感じで話を始めるが、すぐに重力に抵抗できなくなり撃沈。4:00くらいだったか。

そのまま寝ずに休日出社。21:00頃帰宅してとりあえず寝る。深夜2:00頃起きたものの、頭のネジが10本くらい抜けてて仙台への出発準備は一進一退を繰り返す。4:30に追い込まれてやっと出発。外環でPince「Dirty Mind」の硬質かつキャッチーなサウンドで自分にハッパをかけ(特に名曲'Uptown'は10回くらい繰返し聴く)、栃木ではThin LizzyNick Loweといった「今までまともに聴いてこなかったものの気になってた音達」を聴いていろいろ考え、福島に入り朝の巨大な太陽が灰色にたなびく雲からその全貌を現わした時にはGRIM「MESSAGE」を聴いて泣き、宮城に入って〆で再びPrince「Controversy」の硬質なサウンドで仙台南ICに降り立つ。

帰宅後、再びニカハウスへ。GRIMの「MESSAGE」を焼かせてもらう。MTR宅録による僕らのための4畳半フォーク。惑星のように遠い昔にぽっかりと浮かぶ陽だまりのような音楽。YAZAWAのような風貌と化した放浪者のお疲れ植野さんと近所のサミットで買い物。鰻、鶏唐、パスタ、コーヒー、セサミクッキー。帰って鰻と唐揚を食い尽して全員一瞬精気を取り戻すものの、直後に植野さんレーニンの死体となる。残されたさやさんと僕も重力に逆らえず床で落ちそうになるも、何とか頑張って起きて、「追憶」「ディーア」「どんなどんな(ジェンカ)」など練習する。練習っていいなぁ。夢の中で練習を聴いていたらしい植野さんが丑三つ時に「カッコイイ!」と叫んで起きる。「日本アンダーグラウンドの正しき系譜」がどうのこうの「シェシズの『約束はできない』みたい」がどうのこうの「よくぞそこまで」がどうのこうのと褒めちぎられ、さやさんと僕はキョトンとしていたものの、その流れでその場で録音することになる。植野さん作のオルガン2台による明け方のような曲など。テレコで録ったやつはレンジの狭さが「ベースメントテープス」みたいで実に格好よかった。6:00頃ニカハウスを後にする。